2010年12月1日

スペシャルショートストーリー『Prince of summer vacation』- プロローグ

夏ですっ! 海ですっ! 南の島ですっ!!!

今、わたしの目の前には真っ青な海と、どこまでも続く白い砂浜が広がっています。
本来なら今日は、学園で学園長先生による特別講座を受ける予定だったのですが……。

学園内の空調設備が少々不具合を起こし、
エアコンが使えなくなってしまい、学園長先生が
「こんな時こそ、慌てず騒がずサマーバケーションデース!」とおっしゃって、
その場でヘリを呼び、みんなを連れて南の島へとやってきたのです。

あぁ、太陽が、そしてみなさんの水着姿が眩しすぎます!

「ん? どうした? ぼーっとして、こういうトコは初めてか?」
海辺で立ち尽くしていたら、Sクラスの日向先生が話しかけてくれた。
「あ、はい。なんだか眩しすぎてくらくらします」
「そうか。まぁ、ここは社長のプライベートビーチ……
つーか、島丸ごとあのおっさんのもんだからな。贅沢っちゃ贅沢だよなぁ。
けど、その分、ここには俺達しかいねーし、なんの気がねもいらねー。
せっかくの休日だ。思う存分楽しめばいいさ」

「そぉよ~。ここは、シャイニーの気が向いた時しか
連れてきてもらえないんですもの。楽しまなくちゃもったいないわっ。
あ、ねぇ、サンオイルの塗りっこしましょっ。背中は手が届かなくってぇ。
夏だし、たまにはイメチェンで小麦色の肌……ってのもいいわよね~」

サマーベッドに身を横たえながら、
サンオイルを腕に塗っていた月宮先生がわたしに、にこっと微笑みかける。

「お前なぁ、自分の性別をちったぁ考えろっ!」
「ええ~。別にいいじゃない、それくらい。
そんなに言うなら龍也が塗ってよ。ほら、サンオイル」

月宮先生がサマーベッドから立ち上がり、
ぽんっとサンオイルを日向先生に手渡すけれど、
「断る! 社長にでも塗ってもらえ」
日向先生はそれをぱしっと跳ね除ける。
「もうっ、なによっ、龍也のケチケチ星人っ!」
そう言って、月宮先生がべーっと舌を出す。

「あの、わたしでよければ、お背中に塗りますよ」
わたしは砂に落ちたサンオイルを拾って、月宮先生に微笑みかけた。
「あ~ん。ありがとっ! だ~い好きっ!」
月宮先生がわたしにぎゅっと抱きついた。
あ……。
月宮先生、見た目は女の子そのものだけど、結構がっちりしてるんだ。
ちゃんと男の人なんだなぁ。

「……はぁ、ったく暑苦しい奴。お前もあんまり甘やかさなくて良いぞ。
こいつは甘やかすと付け上がるからな」
「そんなことないもんっ。ね~~」
わたしをぎゅっと抱きしめたまま、月宮先生が顔を覗き込んでにこっと笑う。
「はいっ!」
あぁ、でもやっぱり女の子みたいに可愛いですっ!

「やれやれ……。けどまぁ、お前も林檎の相手は程ほどにして、
あいつらと一緒に遊んで来い。あぁ、それと……。
泳がないならこれ被っとけ。今日の陽射しは殺人的だからな」
ぽすっと、日向先生が麦藁帽子を被せてくれた。

「んじゃ、俺は夜の準備があるからもう行くぞ。
林檎、お前もオイル塗ったらすぐ来い。じゃねーと夕飯抜きだかんな」
そう言って、わたし達に背を向けると、
日向先生はロッジに向かって歩いて行った。

「むぅ、わかってるわよーーだ」
去っていく日向先生に、いーーっと可愛らしく悪態をついてから、
月宮先生がわたしに向き直る。
「さぁてと、じゃあ、塗りっこしましょうか。
サンオイルだけじゃなくて、日焼け止めもあるからね!
女の子なんですもの。お肌のケアはしっかりしなくっちゃ」
そうして、わたし達は互いにサンオイルと日焼け止めを塗りあった。

「は~い。これでもう大丈夫っ!
すみずみまで丁寧に塗ったから、変に日焼けすることはありませんからねっ」
日焼け止めを塗り終わり、月宮先生が満足気にわたしを見つめる。
「ありがとうございます!」
背中や腕、自分の手じゃ届かないところを、月宮先生に塗ってもらった。
これなら、後でひりひりすることもなさそうです。
「さてと、アタシはもう行くけど、あなたは泳ぎにでも……
あ、ほら、王子様が迎えに来てくれたみたいよ」
そう言って、月宮先生が海辺を指差す。

「お~い、一緒に泳ごうよっ!」
一十木くんが大きく手を振り、こちらへ向かい走ってきた。

To be continued