2011年12月24日

chara_mizushima

きっかけは些細な事だった。

今日はクリスマスだから出掛けようと、
僕は誘った。
お決まりのデートコース、ディナー……
そんなものは君の前では何の意味もない。
「どこに行きたい?」
と聞く僕に、
君は『一緒ならどこでもいい』の一点張り。
僕の台詞を取らないでほしいなんて思いつつも、
僕は一か所だけ連れて行きたい場所があったから誘った。
問題はその帰りだった。
互いの指先を暖めあうように手を繋いで歩く。
そこまでは良かった。
一緒に歩いているとキレイな女性が僕達の横をすれ違った。
僕はその人を目で追ってしまった。
それを見られたのだ。
日頃から自分がお子様だと
コンプレックスを抱いている君は
それがショックだったらしい。
小さな頬が少しだけ膨らむ。
それを僕が見逃すはずがない。
かと言って何も言われてないのに言い訳もできず……
素直じゃない僕はそのまま気にしないふりをして僕の部屋に向った。
それがいけなかった。
すれ違った女性の容姿など覚えてはいない。
ただ、その首元をさりげなく飾るネックレスが
君に似合いそうだと思っただけ。
言えばよかった。
そう言えばよかったんだけど……。
部屋に戻ってもまだ少しいじけている君に、
僕は意地悪く「お子様」と言ってしまったのだ。
我ながらこの性格が嫌になる。
瞳に涙をいっぱいに溜めて、
言葉を飲み込もうとする姿が見ていて痛々しい。
自らを傷つけさせるような言葉を
君に言わせようとしている……。
それに気付いて初めて、僕は後悔する。
今さら遅いと分かっていながらも
本当の理由と君への気持ちを口にする。
「お子様って言ってごめんね。
 さっきのはただあの人がつけてたネックレスが
 君に似合いそうだと思っただけで、
 僕が君以外に興味あるわけないでしょ?」
その言葉を聞いて、君は困ったように笑う。
そんな笑顔をさせてしまってごめん……
それを口にするのは恥ずかしくて
何も言わず抱きしめる。
最初は恥ずかしがっていた君も次第に
諦めたのか僕の背中に手を回す。
しばらく無言のまま抱きしめ合った。
「キス、したい……」
僕がつぶやけば、君は頷く。
身体を少し離し、
互いのぬくもりを探し合うように唇を重ねる。
「もう一回……」
そのキスは熱をおびながら少しずつ深くなっていく。
クリスマスの夜。
素直じゃない僕と、素直な君。
「……ごめん。これ以上はガマンできないよ?」
素直じゃない僕の意地悪な問いに、
素直な君は顔を赤くしながらも頷く。
切ない溜息を抑えながらもう一度キスをして、
僕たちはクリスマスの夜の闇に溶けていった。